「峡泉」

【南信州の祭り】
徹夜で踊り明かす新野の盆踊り

2019.08.20


長野県の最南端にある町、新野。
この地区ではお盆の時期になると徹夜で朝まで踊り明かす「新野の盆踊り」が行われます。


毎年8月14日~16日の3日間、夜の9時ごろから翌明け方まで踊り明かし、最終日には神送りの儀式も行われます。
はじまりは500年ほど前の1529年とされ、国の重要無形民俗文化財にも登録されています。
明治~昭和の民俗学者、柳田國男もこの盆踊りを絶賛し、指導まで行いました。


同じ徹夜踊りでは岐阜県郡上市で行われる「郡上踊り」が有名ですが、新野の盆踊りは太鼓や笛、三味線と云った鳴り物を一切使わず、音頭取りの唄だけで踊るのが特徴です。


手踊りだけではなく、扇子を使った踊りもあり、踊りによって進行方向や扇子の持ち方が変わります。


新野の盆踊りは最終日の16日、つまり17日の明け方に一番の盛り上がりを見せます。


明け方、盆踊りの中心に組まれた櫓から切子灯籠が取り外され、これを担いだ行列が、神送りの儀式が行われる瑞光院というお寺を目指します。


この行列が踊り子たちの間を通り過ぎると、盆の時期が終わり秋が訪れます。
盆が終われば盆踊りを踊ってはいけません。


そろそろお盆で迎えていたご先祖様が帰る時間。
けれどもやっぱりお別れは寂しい。
そんな葛藤からか、踊り子たちは行列の先々でいくつもの小さな輪を組み、「能登」という踊りを踊り始めます。
盆踊りの終わりを惜しむ踊り子たちが行列の進行を邪魔するのです。


「能登」の踊りが許されるのは神送りのこの時だけ。


行列を邪魔する踊り子たちは、さらに激しく踊ります。


踊りをやめさせようとする行列と、行列を邪魔する踊り子たちの押し合いへし合い。
新野の盆踊りが一番の盛り上がりを見せる瞬間です。


全ての踊り子たちが押しのけられ、行列が瑞光院までたどり着くと、神送りの儀式が始まります。


担いでいた切子灯籠が積み重ねられ、行者が呪文を唱えて九字を切り、刀によって道切りの式が行われると、切子灯籠に火が点けられ、神送りの儀式は終わり。

祭りの参加者は後ろを振り返らず、秋歌を歌いながら帰ります。
決して振り返ってはならないのです。

南信州の山あいで続く新野の盆踊り。
老若男女、地元の人だけでなく、誰でも参加することができます。
浴衣と下駄を履き、扇子を腰に差して踊りに来てみてはいかがでしょうか。